「マリア!まだですか?」
「すみませんロージ神父!荷物を取りに部屋に戻っても?」
「いいでしょう。5分で頼みますよ!」
「はい!」
私は部屋に戻って、肩掛けカバンを引っ張り出す。
中には聖水、香油、聖書、十字架など、エクソシストの七つ道具ともいうべきものが入っている。
実際、私自身にも悪魔が憑いているわけで、いつ何がおこるかわからない。
「マリア。たまにはオレに暴れさせろ。最近おとなしくしすぎて、力を持て余し気味だ。」
背後から、悪魔ウリエルのあの、地獄から響くような声が聞こえる。
「ウリエル……頼むから、街に出ている間だけでも、おとなしくしていて頂戴。」
「さあて、どうするかな。オレはあの神父がいけ好かない。」
懲りない様子でニヤリと笑う。
やれやれ……何かやらかしたら、聖水をふりかけてやるから!
「すみません、遅くなりました!」
私はバッグを抱えて飛び出した。
「いいでしょう……5分アンダーですね。」
ロージ神父は時間に厳しい。扉を勢いよく閉めると、黒のアルファロメオが走り出した。
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ローマ市街に到着すると、ロージ神父は寄宿舎を修理、改築するための日曜大工の道具やタイル、目止め材などを買い集めた。
「ええと、あとは棚材ですね。マリア、重たいけど大丈夫ですか?」
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