「悪魔マルコシアス!神父どもに噛み付けっ!」
 ウオオオと咆哮し、ジードに命じられた狼の悪魔は凶暴なキバを剥いて、私たちに襲い掛かってきた。

「ウリエル!!」

「おい、狼の挨拶は下品すぎるな!?」

 悪魔ウリエルが、黒い煙の中から手をのばして、マルコシアスの牙を止めた。

 腕を咬ませて、マルコシアスの牙を受け止めたウリエルはうそぶく。

「ふん。久しぶりに極上の悪魔の心臓を喰えそうだな。」
 ウリエルは痛みを感じないのか、ただ、目の前の悪魔を見てニヤリと笑った。

 ほかの悪魔を、自分の獲物としてしか認識していないかのようだ。

「くそ……悪魔マルコシアスの牙を、腕で受け止めやがった!?」
 ジードが、息をのんで悪魔ウリエルを見た。

「クク……でもそう来なくちゃ面白くない。悪魔ウリエル、貴様の力、確かめさせてもらうぜ?マルコシアス、そのままソイツの腕を噛みちぎれ!!」

 ジードが命じると、グルルル、とマルコシアスはますます深くウリエルの腕に牙を埋めた。

「ふん……余裕ぶりやがって。貴様の心臓はココかァ?」

 ウリエルの振り上げられたツメが、暗闇にぬるりと光る。

 そして……

 ザグリ、と悪魔マルコシアスの胸に、ウリエルのツメが突き立てられた。

 ウオオオーーン、と体を揺らして逃げようとする狼の悪魔。

 しかし、ウリエルはさらに奥深くの心臓の位置を探っている。

 どんなにもがいても、ウリエルの凶悪な締め付けから、逃げることはできない。

「愚か者め。自分からのこのこ、心臓を捧げにくるとはな!さあどこだ、お前の心臓は?」

 飢えたウリエルの声が、私の頭上に響いた、その時。

「きゃ…………!!」
 私の腕に痛みが走る。





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