「このままじゃ、埒が明かないなァ、マリア?」

「わかってる……アンタに任せるわ」

 すると、ウリエルは私の襟首をつかんで、悪魔の前に突き出すとこともなげに言い放った。

「おい、貴様……このオレを倒したら、このオンナを好きにしていいぜ?」
 ウリエルは私を差し出し、悪魔を挑発する。

「な……!!」

 スピリタス隊のメンバーが皆、硬直した。

「この悪魔め、ふざけた真似は止せ!」

 驚き、怒号を上げる宗像さん。
 でも実は、私はこんなことには慣れっこだった。

 まだ日本に来る前、法王庁に居た頃、ウリエルはいつもこんなふうに私を材料に、悪魔に取引をもちかけていたからだ。

「大丈夫です、宗像さん。ウリエルは決して負けませんから。」
 私は宗像さんを安心させるように、にっこり笑って応えた。

 まだウリエルが、私の襟首を掴んでいて苦しいけれど……できる限り、平静を保って見せる。
 
しかしこの笑顔が逆に、宗像さんを戦慄させてしまったようだ。

「マリア、正気なのか!?お前は、その悪魔に利用されているんだぞ!?」

「人間は黙ってろ。これは悪魔同士の取引だからな。さあ、どうするんだ?」

 ウリエルはニタリと笑って、少女にとりついた悪魔に詰め寄る。

「どうした?お前の憑いているそのオンナも、疲れ果てて、そろそろ寿命が尽きる頃だ。それならコイツのほうがイキがいい……悪くない取引だろう?」

「…………ウルサイ悪魔ダ……。」
 少女の口から、ぼろぼろと、無数の細い釘のようなものが吐き出され……その奥から、悪魔の影が飛び出す。

「これ以上オレの邪魔をするな!殺されたいのか!?」
 悪魔の咆哮が、部屋中に響き渡る。少女から悪魔が飛び出した。

「ふん……あっさりかかりやがって……!!」
 ウリエルの爪が、悪魔の頭部をガッチリと掴む。

「この毒爪にかかって、逃れたヤツはいないぜ。このオレに接近戦を挑んだ、自分の浅はかさを呪うんだな!!」

 ウリエルは、悪魔に一撃を加えた。



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