「マリアって寮暮らしなんでしょ?僕も、両親の家で暮らしているときは、部屋にはあんまり興味なかったんだよね。今回は、古くてもオシャレな部屋がいいな。そしたら、2人用のテーブルセットを入れて……ま、とりあえず僕一人の部屋なんだけどね」

 私が聞いていようがいまいが、ジョーカーは楽しそうに話し続ける。

 悪魔憑き特有の気配が気になってお茶どころじゃない。

「それより、マリアは修道寮で暮らしてるんだよね?ちょっと地味でいいよね。一生独身の人専用でしょ?……でも、マリアが気に入ってるなら、いいと思うよ。そうだ、僕の部屋が完成したら、きっと見に来てよ。君も気に入るよ!」

「……………………………」
 私は返事をしなかった。皆が心配してるのに、こんなところでお茶してる場合じゃない。

 なのに身体は動かない。お茶にもケーキにも手をつけずに、私はただ時間を気にしていた。

「どうしたの、マリア?さっきから黙ってるけど……」
 ジョーカーは困った顔でこちらを見た。

「……そっか、僕だけが楽しいんだよね。さっきから、君は笑わないし。僕だけが喋ってる。」
 ジョーカーはふと、私の目を見て、寂しげに笑った。

「ごめん、退屈させたね。いいよ、もう帰っても。」
 ジョーカーはそそくさと立ち上がった。

「じゃ、ケータイを返してくれる?」

「ああ、約束だからね。……はい。」

 いつのまにか、私の膝の上に携帯が乗っていた。

「それから、君の呪いを解くのは、“洞窟の悪魔”だ。覚えておくといい。」

 ジョーカーは少し、悪魔憑きらしい顔を見せた。

 ほんの一瞬だけど、悪魔に憑かれた険しい目になる。

「仲間のところに帰りなよ。嫌がる女の子を無理やり側にひき留めておくのは、僕の趣味じゃないし。やっぱ、そんな顔されたら、傷つくしね。」

 ジョーカーは少し情けなそうに、人間らしい顔で笑った。

 私が席から立つと、ジョーカーは当然のように椅子を戻す。



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